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ホテルライクな家の窓辺。カーテンとブラインドの選び方

ホテルライクな家の窓辺。カーテンとブラインドの選び方

家づくりの打ち合わせで、カーテンの話が出てくるのはたいてい最後です。間取りが決まり、内装材が決まり、照明が決まり、引き渡しが近づいてから「そういえばカーテンをどうしましょう」となる。
けれど実際に暮らし始めてみると、部屋の中でいちばん面積が大きく、いちばん目に入るのは窓辺です。壁一面の大きさを持つ布が、既製品のレールごと後から掛かる。それまで丁寧に整えてきた空間が、最後のひとつで印象を変えてしまうことは、決して珍しくありません。
ホテルの客室に入ったとき、窓辺がすっきりと美しく見えるのには理由があります。カーテンそのものが上等だからではありません。掛けるための仕掛けが、建築の側にあらかじめ用意されているからです。

窓は「開ける装置」であり、「閉じる装置」でもある

設計の打ち合わせでは、窓は基本的に「開けるもの」として語られます。どこから光を入れるか、どこに景色を抜くか、風はどう通すか。それは正しい議論ですが、住まいの窓には、もうひとつの役割があります。閉じることです。
夜になれば外から中が見えます。西日が入れば眩しく、暑い。寝室は朝の光で目が覚めてしまう。テレビの画面に窓が映り込む。つまり窓は、開いている時間と同じくらい、閉じている時間を持つ設備です。
この「閉じる側」を後回しにすると、せっかくの大きな窓に、急ごしらえの厚い布がずっと掛かったままになります。昼間もカーテンを閉じて暮らすことになれば、その窓は何のために大きくしたのか分からなくなってしまう。
ですから私たちは、窓の大きさや位置を決める段階で、その窓を「どう閉じるか」まで一緒に考えます。閉じ方まで含めて設計されている窓だけが、開けたときにも美しく見えます。

ホテルライクな窓辺は、レールを見せないところから始まる

窓辺の印象を決めているのは、布の柄でも色でもなく、じつは上端の処理です。
既製のカーテンレールを壁に付けると、レールの本体、ブラケット、キャップ、そしてカーテンの襞の始まりが、すべて目線の高さより上に露出します。そこに影ができ、線が増える。ホテルの客室にこの線がないのは、レールがカーテンボックスの中に隠れているか、天井に彫り込まれた溝に納まっているからです。
方法は大きく二つあります。ひとつは天井にカーテンボックスを設け、その中にレールを納めて手前に幕板を出す方法。もうひとつは天井の懐を使い、細い溝だけを見せてレールを完全に隠す方法です。後者のほうがすっきりしますが、天井の下地や梁との取り合いを先に決めておく必要があり、後からでは基本的にできません。
さらに、この納まりには副次的な効果もあります。カーテンの上端に隙間ができにくくなるため、窓辺で冷やされた空気が室内へ降りてくる流れを抑えやすくなる。見た目のためだけの処理ではないということです。

カーテンか、ロールスクリーンか、ブラインドか

窓に掛けるものは、性格がそれぞれ違います。部屋ごとに使い分けるのが基本です。
ドレープカーテンは、布が持つ襞の陰影と、閉じたときの柔らかさが持ち味です。厚手の布は音を吸う働きも期待できるため、寝室やリビングなど、こもり感がほしい部屋に向きます。天井から床まで一枚で落とすと、壁面のように見えて空間が整います。
レースやシアーは、昼間の視線を和らげながら光を通す層です。ホテルライクな窓辺をつくるうえで、じつはこれが主役になります。日中に閉じていても暗くならず、外の緑がうっすら透ける。生地の織り方によって光の質が変わるので、実物を窓辺で確認する価値があります。
ロールスクリーンは、一枚の面として上下する分、たたんだときにいちばん存在感が消えます。洗面やトイレ、階段のスリット窓など、開閉の頻度が低い小さな窓に向いています。
ブラインド、とくに木製の横型は、羽根の角度で光と視線を別々に調整できるのが利点です。外から見えないようにしながら、天井に光だけを返すこともできる。ただし羽根の上に埃が乗るため、掃除の手間は正直にお伝えしています。
どれかひとつに統一する必要はありません。ただし、ひとつの空間の中で見えるものは、種類を絞ったほうが静かに見えます。

色は「窓側」ではなく「壁側」に寄せる

窓辺の色選びで迷われたときに、私たちがお伝えしているのはひとつです。カーテンを一枚の家具として目立たせるのではなく、壁の続きとして見えるようにする。
具体的には、壁の色と同じトーンか、半歩だけ濃い程度に収めます。白い塗り壁ならオフホワイトから淡いグレージュ。石やタイルを使った落ち着いた空間なら、その石の中間色を拾う。柄物や、壁と大きく異なる色を選ぶと、窓辺だけが前に出てきて、空間の奥行きが浅く見えてしまいます。
素材感も同じ考え方です。光沢の強い生地は照明を反射して硬い印象になりやすいので、麻やウールのような、マットで陰影の出る風合いを選びます。
そのうえで、丈は床すれすれまで落とします。窓枠に合わせて短く切ると、そこだけが「掛けもの」に見える。床まで落ちた一枚は、壁の一部として静かに背景に回ります。ホテルライクな空間で目指しているのは、窓辺を主役にすることではなく、主役から外すことです。

そもそも、掛けなくてよい窓をつくる

いちばん美しい窓辺は、何も掛かっていない窓辺です。
これは理想論ではなく、設計で実現できます。道路や隣家に向いた窓は必要最小限にとどめ、大きな開口は中庭や坪庭、テラスといった、自分の敷地の中に向けて開く。外から見られない窓であれば、カーテンは要りません。京都の市街地のように、隣家との距離が近い敷地ほど、この考え方が効いてきます。
同じように、視線より高い位置に設ける高窓や、細い縦スリットの窓も、掛けものなしで成立します。光は入るのに、外からは中が見えない。壁の面積を確保できるので、家具の置き方も自由になります。
もちろん、すべての窓をそうはできません。だからこそ、掛ける窓と掛けない窓を早い段階で仕分けておく。掛けない窓が決まれば、その周りの壁は本当に何もない面として設計でき、空間はぐっと静かになります。

夜の窓は、鏡になる

見落とされがちなのが、夜の窓です。
外が暗く室内が明るいと、窓ガラスは鏡のように室内を映します。天井の照明がいくつも映り込み、自分の姿が映り、外の景色は見えなくなる。昼間はあれほど気持ちのよかった大開口が、夜はいちばん落ち着かない面に変わってしまうことがあります。
対策は二つあります。ひとつは、夜にきちんと閉じられるようにしておくこと。ドレープを引けば、窓は布の面になり、部屋は落ち着きます。
もうひとつは、照明の側で解くことです。天井を照らすコーブ照明や、壁を洗うコーニス照明のように、器具そのものが視界に入らない光にしておくと、ガラスに映り込むのは光源ではなく、ぼんやりと明るい面だけになります。そのうえで庭の樹木を外から一灯照らしておけば、窓の向こうに景色が生まれ、鏡は窓に戻ります。
カーテンの話をしているつもりが、照明と外構の話になる。窓辺とは、そういう場所です。

遮光と断熱。数字で確認しておきたいこと

見た目の話が続きましたので、性能の話も整理しておきます。
遮光には等級があります。日本インテリアファブリックス協会の基準で遮光1級から3級に区分されており、1級がもっとも光を遮ります。寝室で朝の光を確実に遮りたい場合は1級が候補になりますが、閉じたときに部屋がかなり暗くなるため、リビングでは2級以下やレースとの組み合わせのほうが心地よいことも多くあります。等級の上下は優劣ではなく、用途で選び分けるものだとお考えください。
断熱については、窓そのものの性能が土台になります。資源エネルギー庁の情報によれば、冬の暖房時に室内から逃げる熱のおよそ6割、夏の冷房時に室外から入る熱のおよそ7割が、窓などの開口部を通じたものとされています。つまり快適さの大部分は、サッシとガラスの選定で決まります。カーテンやスクリーンは、それを補助する層と位置づけるのが正確です。とくに上端や両端の隙間を減らす納まりにしておくと、補助としての働きは高まります。
なお、防炎品の使用義務は、高さ31mを超える高層建築物や、不特定多数が利用する施設などに課されるものです。一般的な戸建て住宅は対象外となります(2026年9月時点)。安心のために防炎品を選ぶことはできますが、義務ではありません。

まとめ:窓辺を決めるのは、図面が固まる前

窓辺の設えは、家具ではなく建築だと考えています。理由は単純で、後から変更できない部分が多いからです。
カーテンボックスをつくるなら、天井の下地と照明の位置を同時に調整する必要があります。天井に溝を彫るなら、天井高そのものに関わります。電動のシェードやスクリーンを使うなら、窓の上に電源が要る。これらはすべて、電気配線の打ち合わせより前に決まっていなければ間に合いません。
逆に、生地の色や種類は後からでも変えられます。ですから優先順位は明確です。先に建築側の仕掛けを用意しておき、布は後からゆっくり選ぶ。引き渡し前の慌ただしい時期に、部屋でいちばん大きな面の色を短時間で決めることほど、後悔が残りやすい場面はありません。
レールを隠す納まりを用意しておくこと。掛ける窓と掛けない窓を仕分けておくこと。色は壁側に寄せ、丈は床まで落とすこと。そして夜の映り込みまで見越して、照明と庭を一緒に考えておくこと。どれも派手な工夫ではありませんが、この積み重ねが、部屋の静けさをつくります。
上質さは、足したもので決まるのではなく、見えないように処理されたものの量で決まる。窓辺は、そのことがいちばん分かりやすく表れる場所だと思います。

窓の位置とあわせて、その窓をどう閉じるか。図面の段階でご一緒に整理できます。

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