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壁紙の歴史

壁紙のおはなし

こんにちは。株式会社TAKAYASUコントラクト事業部部長の木原です。
今回は趣向を変えて壁紙のおはなしをしてみようと思います。

国内では壁紙、クロス(Cloth)等と呼ばれており、英語ではウォールペーパー(Wallpaper)と呼ばれています。皆さんのお住まいの壁にもきっと使われているのではないでしょうか。

では壁紙はいつ頃から使われているのでしょうか。

一般的には中国で明時代に発祥した室内壁面に加飾された紙を貼る習慣を見たヨーロッパの宣教師が持ち帰り伝えた事で世界に広まったと言われています。
然し、中国では隋、唐の時代には紙に木版印刷を行う技術が始まっており、壁に貼ったりもしていた様なので、本当の起源は良くわかっていないともいえます。
少なくともヨーロッパでは19世紀のイギリスで詩人であり思想家でありデザイナーでもあった近代デザインの父と呼ばれるウイリアム・モリスがアートアンドクラフト運動(生活に必要な物こそ美しくあるべきと主張した運動)の一環として産業革命により急速に発展する大量生産に反発し、自然染料を用い樹木や草花、鳥や虫といった自然界をモチーフに展開した壁紙が世界中で受け入れられ、壁紙文化が急速に定着していったと言えます。

いわゆる壁紙の名称で用いてきた訳ではありませんが、日本の歴史でいえば聖徳太子の時代には渡来系豪族として繁栄していく秦氏によって紙作りがもたらされ、唐の時代の木版印刷技術が伝わった事で平安時代には唐紙として日本でも発展していく事と成ります。
唐紙は金泥や貝殻を砕いた粉である雲母(ウンモ=キラ)等を絵の具として用い山海の自然をデフォルメしたデザインをモチーフに木版印刷を行う技術です。
童謡でおなじみの♪キラキラ光るお空の星よ~♪にあるキラとは、薄暗い和室の中で壁や襖の唐紙の雲母が光る様だと歌っている訳です。
歌詞は逆説の様にも聞こえますが、それ程に日本家屋に定着していた文化だとも言えます。
この唐紙を壁紙や襖に用いた建築としてつとに有名なのが「桂離宮」ではないでしょうか。

その他、御殿や寺院等で室内装飾に用いられた柱間を埋め尽くす襖や、漆喰壁に和紙を貼りその上から狩野派等の絵師が描いた絢爛豪華な障壁画も大分すれば壁紙の一種と捉えても良いのではないでしょうか。
又、土壁の土こぼれや汚れ防止として茶室等の壁面下部に床面から九寸(約27cm)の高さで和紙を貼る文化「腰張り」はシンプルな用途ですが正に壁紙です。
あと、現代ではほとんど見られなくなりましたが、明治期には西洋のギルトレザーと呼ばれる革に金箔などの型押しを行った高級壁紙の文化をまねて、鹿鳴館等の壁を華やかに飾った金唐紙も名称だけは忘れずにお伝えしておきます。

日本では戦後の昭和以降サンゲツ、リリカラ、東リ等の大企業がグラビア印刷を用い大量多品種で販売している為、日本独自の高性能な壁紙が当たり前になっていますが、世界ではいまだにオフセット印刷等で生産される壁紙も多く、これは施工方法にも大きな違いをもたらしています。
日本では広幅でロール状に届けられる壁紙を糊付け機と呼ばれる簡易な機械で壁紙の裏面に糊を付ける事ができ、畳んだ状態で壁に直接貼り付ける手法が一般的ですが、海外ではせいぜい10m程度のロールが多く、壁の方に糊を付け壁紙を貼り込む手法が主流です。
どちらの壁紙にもメリットとデメリットはあるものですが、海外の壁紙には壁側に糊を付けるからこそ有効な仕上げとして、表面にシルクレースを貼り込んだ壁紙や少しづつ版をずらす事で一カ所として同じ柄が存在しない壁紙も有ります。

ラグジュアリーホテル等ではこの様な海外の高級壁紙を用いる事がありますが、糊付け機に通せば表面のシルクレースが濡れてチジミしわになってしまう為、日本の壁紙職人が苦悩している姿をよく目にします。

弊社でもサンゲツさん等の国産壁紙は日常的に施工しておりますが、皆様も日頃よく目にされているでしょうから今回は割愛させて頂き、最近施工した海外製の壁紙としてオランダを代表する世界的建築家であり家具デザイナーでもあるピート・ブーン氏がプロデュースされた壁紙を施工写真として紹介させて頂きます。

こちらの黒い壁紙がピート・ブーンであり、天井はおなじみサンゲツさんです。

日本製壁紙に慣れ親しんでいる職人にとってはデパートの包装紙の様に見える薄い不織布製で柄には送りが無い上、オフセット印刷の為特徴的な柄はどこかにある事が災いして、たまたま横に同じ特徴の柄部が並ぶと美しくない為、手配した全ての壁紙を一旦広げてどこにどの壁紙を貼るかをチェックしてから貼らねばならず苦戦していました。
然し、真っ黒の壁が汚れた様にしか見えない柄でしたが、貼ってみると何とも言えない世界観が伝わる良い壁紙でした。
実際に使ってみて、世界のセレブリティに人気の理由が少し分かった気がしました。

昨今建築家などの著名なクリエイターも数多く壁紙をプロデュースしており、日本が世界に誇る建築家からは隈研吾氏が職人とサンゲツのコラボで「カゲトヒカリ」コレクションとして同じく黒い壁紙を発表されています。

白い壁紙に慣れ親しんだ日本人にとって黒色や総柄の壁紙に挑戦される事も暮らしを豊かにする一つの手段ではないでしょうか。

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