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イタリアが生んだ金属左官素材の最高傑作

イタリアが生んだ金属左官素材の最高傑作

こんにちは。株式会社TAKAYASUのコントラクト事業部の木原です。

左官と云えば漆喰や珪藻土、聚楽 等が日本人には古くより馴染みのあるマテリアルではないでしょうか。

然し、欧米でも漆喰は古くより用いられており、左官技術は世界各国で様々な進化を遂げております。

日本ではメラミン化粧板等でおなじみのアイカ工業さんが吹付としても用いられる左官素材ジョリパットを販売しており、ひと頃店舗やホテル等で人気を博したモールテックス等も化粧左官素材の代表格でしょう。

然し、今回紹介する左官素材は所謂土壁やモルタルとは全く表情の異なる素材です。

完成した状態を見れば左官仕上げと気付く人は少ないでしょう。
金属粒子を用いて仕上げには磨きをかける金属左官マテリアルです。
これまでドイツやオーストラリア、アメリカ等のメーカーも金属調左官材を販売してきましたが、その多くは金属色の土壁を超えるものでは無かったと言えます。

今回のマテリアルは昨年日本に輸入されたばかりのイタリアの新素材「ピューロメタロ」です。
仕上がりが金属そのものでありながら、様々なエンボス柄を成形できる事が特徴です。

下地は金属、木材等にも施工でき、屋外でも施工可能な事が特徴です。
施工方法は途中段階までは通常の左官と変わりませんが、メーカーが用意する型ローラーにより10パターン以上のテクスチャーが用意され、金属色もアイアンやカッパー等本当の金属泥の粒子を一粒づつ特殊なコーティングをする事で錆びない金属粉と成っており、最終で磨き上げる事で鋳型成形された金属板と見間違える程の金属特有の輝きを見せます。

但し、ローラーの使い方や柄の送りを自然に見せるには左官職人の技量が非常に要求されます。

具体的にお話しますと、5円硬貨を想像してみて下さい。

日本の貨幣には1円から500円迄6種類の硬貨があり、新貨幣として500円硬貨の再先端技術などが話題に上る事が有りましたが、日本円は米ドル、欧州ユーロと並び世界通貨に認定されていますが、海外の方にはいくらか分からない硬貨が1種類だけ流通しています。それが5円硬貨です。

これは雑学の話しですが、日本では穴の開いた硬貨は5円と50円の2種類だけです。実は穴開き硬貨は世界的にも非常に珍しく、技術的に製造が難しい事もありますが、古い貨幣は穴にひもを通して纏めていた名残とも言えます。
又、5円は日本では唯一の黄銅硬貨であり、1969年(昭和34年)よりデザインが変わっておらず、農業(稲穂)水産業(横ストライプ)工業(歯車)の日本の主要産業を示している珍しいモチーフであり、特筆すべきは海外の方々には分からない硬貨と先述した理由が、唯一アラビア数字を用いず漢数字のみで表記された日本人として誇るべき貨幣であると思えたからです。
なんだか今すぐ財布の中を見てみたくなったんじゃないですか?

随分話しが脱線してしまいましたが、5円硬貨は直径僅か22.0mm、厚さ1.5mmの中に両面異なる浮彫がなされており、実際のレリーフ高はミクロンの世界ですが、柄として十分に目視判断できているのではないでしょうか。

何が言いたいかと申しますと金属は光の高反射により、わずかな凹凸でも陰影がはっきりとして十分な凹凸を感じる事ができるマテリアルです。

今回のピューロメタロも実際の左官厚は3mm以内でありながら、テクスチャーとしては十分な凹凸として柄を構成する事と成ります。
基本はメーカーが用意した型ローラーを用いますが、押さえ方により柄が形状として認識できなかったり、深すぎて下地に達してしまいます。
その差はわずか数十~数百ミクロンであり左官職人の腕に掛かっています。
特に今回はオブジェとしてアート作品に仕上げたかったこともあり、ローラーによる柄送りが自然に見える様、実際には左官職人に彫塑やモルタルアートの様にヘラなどで補足的に成形して頂きました。

今回の制作には私も立ち会い、わがまま放題に「ここはもっと深く、そこはもっとなだらかに」等と申しており、職人さんはさも当たり前の様に私の希望通り成形頂いておりましたが、その制度は全てミクロンの世界の話です。
当然日本初入荷のマテリアルですから仕上左官職人さんにとっても初めて取り扱うマテリアルです。
今回本制作の段階で当然の如く腕が動くまでにはどれ程の努力があったのでしょうか。
依頼してから本制作に入る迄に数カ月のタイムラグが有りましたが、その間にも日々どこかの現場で仕事をされながら夜な夜などれほどの鍛錬を積んで頂いたか伺える制作光景でした。
私は工房ではその様な裏での努力を見ないふりをしてわがまま放題に注文しておりましたが、本音として心から感謝しておりました。


弊社ではハイブランド店舗やラグジュアリーホテル等の現場に携わる事が多く、常に世界の最先端マテリアルを用いる事と成り、お付き合い頂く職人さんにとっても初めて手にするマテリアルが多い中、興味を抱いて頂き、探求心深く試行を繰り返して頂く事で、日本は他国より高いクオリティーを保たせて頂いております。
弊社にとり全国の匠のネットワークこそが誇りであり、全ての匠には心から感謝しております。

最後に画像の仕上げを名称でお伝えしますと、壁面オブジェにはアイアン色クロコ柄を用い、玄関扉にはピューター色ルーチェ柄、門扉・屋外化粧パネルにはコッパ―色フォリエ柄を用いました。

今回は全体の調和を考慮してあえて輝きは抑え気味としましたが、他の左官職人、金工職人、塗装職人に内容を告げず質問を繰り返してみましたが、現物を目の前にしても、どの様に作られたものかが分からないとの事でした。

これこそがピューロメタロの魅力です。

本物の金属鋳物で制作しますと超重量と成り住宅壁面の壁吊オブジェには不向きです。
又、今回は門や玄関などのスチールドアにも用いていますが、同じく鋳物では電子ロックなどの機能を持たす事も難しく、重い為、吊り扉には使用できません。

未だ国内でピューロメタロを熟知している左官職人は少ない為、今回も試行錯誤を繰り返しましたが、弊社が依頼した仕上左官の匠は今回の制作の間に熟練して頂いたと確信しております。

ピューロメタロの用途は無限です。
まだ誰もが知らない、これからのマテリアルを求められる方には最適ではないでしょうか。

今私が一押しのマテリアルです。

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