リビングの一角を、二人だけの特等席に
お店のような席。でも、二人とも座れる。
今夜は、まっすぐ帰りたい。そう思える一杯の居場所が、リビングにあったら。黒い石のカウンターにグラスを置き、椅子を隣に並べる。いつもの飲み物でも、食卓とは違う景色の中で楽しめます。
家にバーをつくると聞くと、カウンターの奥に立つ人と、手前に座る人を思い浮かべるかもしれません。でも、家で二人の時間を楽しみたいなら、どちらかがずっと接客する配置にしなくてもよいはずです。今回の案は、壁へ向かって並んで座る小さなカウンター。飲み物を用意したら、二人とも同じ側へ腰を下ろします。
正面に見えるのは、棚の下から照らされた黒い石。横を向けば、窓の向こうに庭があります。向かい合って食事をするダイニングとも、身体を預けるソファとも違う、もう一つの過ごし方です。
下の設計イメージでは、カウンターをリビングの壁のくぼみへ納めています。部屋をもう一室増やす発想ではなく、いつもの空間に「ここへ座りたい」と思える場所をつくる。ホームバーの魅力を、設備の数より、この二席に集めています。

昼の設計イメージ。座る場所の下は空け、グラスの収納を右へ分けています。ここでは収納の扉を開け、内側の使い方も見せています。
グラスの置き場所は、膝の前から横へ
カウンターの下をすべて収納にすると、物はしまえても、座る人の足が入る場所を失います。写真の案では、椅子の前を空け、グラスの収納を右側の縦長の扉へ分けました。バーらしい見た目だけでなく、座ったまま膝を無理なく入れられることを優先した構成です。
上の棚に見せるボトルは少数に絞り、残りのグラスやトレーは横の収納へ。本文画像では、その違いが分かるように収納の扉を開けています。棚へ何でも並べるのではなく、使うために取り出す物と、景色として残す物を分けると、石壁の表情も見えます。
扉を開いたときに、隣の席にぶつからないことも大切です。平面図に「収納」と書くだけで終えず、椅子を引いた状態と、扉が動く範囲を重ねて描きます。よく使うグラスを、背伸びをしないと取れない棚へ集める必要もありません。手に取りやすい位置に普段用を、上の棚には出番の少ない物を振り分けます。
カウンターの上を片付けるために、毎晩別の部屋へ往復するなら、その席は少し面倒になりそうです。座る場所のすぐ横に戻せることまで含めて、美しい状態を続ける仕組みにします。
高さは「バーらしさ」より、肘と足で決める
背の高い椅子を置けば雰囲気は出ます。ただ、グラスを置くたびに肩を上げたり、足の置き場を探したりする席では、ゆっくり過ごしにくくなります。カウンターと椅子は、別々の写真を見て選ばず、組み合わせて座ってみたいところです。
家具メーカーのアダルは、カウンター天板と椅子の座面の高さの差を、25〜30cm程度の目安で紹介しています。たとえば天板高さ90cmなら、座面高60〜65cmが候補になります。ただし、体格や使い方で合う高さは変わるため、この数字だけで座り心地を決めるものではありません。
ここで気をつけたいのは、天板の上面と座面の差が合っていても、厚い天板や下の補強が太ももに当たる場合があることです。石の見える厚み、裏側の納まり、椅子をどこまで入れられるかも一緒に見ます。画像は構成を伝える案で、施工寸法を保証する図面ではありません。
写真の椅子には背もたれと足掛けがあります。実物では、腰を下ろしたときの足の収まりや、乗り降りのしやすさを試します。高い席が好みに合わなければ、低いカウンターと椅子の組み合わせへ変えてもかまいません。ホテルライクな雰囲気は、高さだけで決まるわけではないからです。
高さの組み合わせと試座の参考
アダル公式:カウンターチェアの選び方灯すのは、グラスの向こう側
夜の見せ場は、正面の石壁です。棚の下へ照明を納め、石の面へ柔らかく光を落とす。すると、座った目線の先に石の模様が現れ、その手前にグラスの輪郭が重なります。天井から部屋全体を同じ明るさで照らすときとは、視線の集まる場所が変わります。
下の夜の画像は、カウンターへ近づいた目線です。棚そのものを光る線で縁取るのではなく、棚の下から壁へ広がる光を主役にしています。天井には別の間接光を残し、手元と足元が見える明るさも確保する考え方です。
パナソニックの照明設計資料では、間接照明は光を受ける面の仕上げと、光源を見せない位置関係が重要だと説明されています。立った場所から器具が隠れていても、椅子に座って下から見上げると見えることがあります。棚の前縁、器具の奥行き、座る目線を、断面で合わせて考えます。
もう一つは、天板への映り込みです。壁を照らす光がきれいでも、手元に強い光源が映れば気になることがあります。石の実物サンプルと照明を合わせ、座る方向から見て選ぶ。夜の雰囲気と、グラスを持つ手の見やすさの両方を確かめたい場所です。

夜の設計イメージ。棚の下の器具を隠し、石壁を照らす光とグラスの表情を近い目線で見ています。
光を受ける面と、器具を見せない納まりの参考
パナソニック「間接照明の設計」黒い石を、ボトルで埋めない
バーの写真を見ていると、たくさんのボトルを並べたくなるかもしれません。今回の案では、棚の片側へ少数を寄せ、残りを空けています。中央に残る石と光を楽しみたいからです。飲み物のコレクションを主役にしたい家なら、また違う見せ方が似合います。
黒でそろえた壁、棚、収納も、すべて同じ表面にはしていません。石には模様と控えめな反射があり、扉は静かな面、椅子は柔らかな質感。色を足さずに、それぞれの違いが感じられるようにしています。太い装飾や金色の縁を重ねなくても、長い天板と棚の線をそろえることで、まとまりのある景色をつくれます。
このホテルライクな一角は、昼にどう見えるかも大切です。左の窓から自然光が入ると、黒い石の細かな模様や椅子の輪郭が見えます。隣のソファや明るい床から急に別のお店へ移ったように分断せず、リビングの一部としてつながる構成です。
素材を決めるときには、切り取った小さなサンプルだけでなく、壁全体の柄の出方も想像します。模様の強い石を選ぶなら、棚や扉の表情は控えめに。今回なら「夜、石とグラスを眺める」という主役を決めておくと、足す物と残す余白を選びやすくなります。
最後の一杯を戻すところまで、心地よく
この案では、カウンターにシンクも加熱機器も設けていません。キッチンで飲み物を用意し、席へ運ぶ使い方です。お酒に限らず、炭酸水や温かいお茶でも、自分の好きな一杯を置ける場所にします。
図面では、冷蔵庫から飲み物を出し、グラスを取り、席に着き、最後に洗い場へ戻すところまで線を引いてみます。途中で大きく回り込む、ソファの前を毎回横切る、扉をいくつも開ける。そんな配置なら、バーをキッチンへ少し近づけるだけで、使い方が変わるかもしれません。写真に写らない往復も、この席の心地よさの一部です。
専用の冷蔵庫やシンクを足す案は、その使い方から検討します。機器の寸法だけでなく、扉を開ける範囲や放熱、給排水、手入れの場所まで必要です。まず今あるキッチンとつなぎ、何を追加すると自分たちにとって楽になるのかを選ぶと、設備を増やす理由がはっきりします。
そして、片付けたあとに残るのは黒い石の壁と、隣り合う二つの椅子。家の広さを眺めるより、「今日はあそこへ座ろう」と思える場所がある。その小さな楽しみを、間取りに組み込むのが今回の提案です。
京都でホテルライクな注文住宅を考えるなら、好きなお店の写真と、そこで気に入った席をLIQへお聞かせください。壁の色やボトル棚だけでなく、誰と、どんな向きで、何を見ながら過ごしたいか。そこから、わが家に似合う一席を一緒に考えていきます。
好きな一杯と、好きな景色がある家へ。
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