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ホテルライクな浴室。京都の注文住宅でつくる上質なバスルーム

ホテルライクな浴室。京都の注文住宅でつくる上質なバスルーム

ホテルの浴室が心地よい理由は、広さではなく「余白」にあります

旅先で泊まったホテルの浴室を思い出すと、多くの方が「静かで、すっきりしていた」と表現されます。ところが実際に寸法を測ってみると、ご自宅の浴室と面積は大きく変わらない、ということも珍しくありません。違いは広さではなく、視界に入る情報の量です。
ボトルが並んでいない。タオルが掛かっていない。壁の面が大きく取れていて、余計な線が走っていない。人はその余白を、そのまま広さや上質さとして受け取ります。
ホテルライクな浴室をつくるとは、設備を高価なものに置き換えることではありません。何を見せて、何を見せないかを決めることです。LIQでは、素材・光・余白・視線・生活感のコントロールという五つの要素で住まいを整えていますが、浴室はこの五つがもっとも短い時間で効いてくる場所です。一日の終わりに二十分ほど過ごすだけの空間だからこそ、情報量を落とすだけで印象が変わります。
まず決めていただきたいのは、浴室を「体を洗う場所」と考えるか、「一日を整える場所」と考えるかです。ここが定まると、この後に続く広さ・素材・光の判断が、すべて同じ方向を向きます。

浴室の大きさ。ゆとりが効いてくるのは浴槽ではなく洗い場です

ユニットバス(システムバス)の規格サイズは、浴室の内寸をおよそ10cm単位で表した数字です。「1616」なら内寸160cm×160cmで、およそ1坪。戸建てで標準的に使われる大きさです。「1620」は160cm×200cmで、1.25坪相当になります。
実際に使ってみると分かりますが、この差が効いてくるのは浴槽ではなく洗い場です。1616から1620に広げても、浴槽そのものの大きさは大きくは変わりません。増えるのは体を洗う側の余裕で、お子さまと一緒に入る時期のあるご家庭や、将来的に介助が必要になる可能性を考えるご家庭では、この差が長く効いてきます。
一方で、広げれば必ず良いというものでもありません。延床面積には限りがあり、浴室を広げた分はどこかが縮みます。私たちは、浴室だけを大きくするよりも、脱衣室と洗面を含めた一続きの空間としてゆとりを配分することをお勧めしています。扉を開けたときに視線が抜ける方向があるかどうか。その抜けのほうが、数字上の面積よりも体感に効きます。

素材は絞る。壁の一面を主役にして、あとはトーンを揃える

ホテルライクに見えるかどうかは、素材の選び方でほぼ決まります。要点は、色数と素材数を絞ることです。
私たちがよく用いるのは、壁の一面だけを主役にする方法です。浴槽の背面、あるいは扉を開けて正面に来る面に、石目やタイル調の落ち着いた面材を使い、残りの三面は同系色でトーンを下げて揃えます。四面すべてに柄を回すと情報量が増え、かえって狭く見えます。天井に木質の面材を使うと、湯船から視線を上げたときの印象が一段やわらぎます。
濃いトーンの壁、温かみのある天井、グレー系のマットな床。この三つの関係が決まれば、浴室の空気はほぼ決まります。派手な色や強い光沢は、高級感ではなく落ち着かなさにつながるため、使いません。
床材は、意匠と同じくらい「乾きやすさ」で選んでください。近年の床材は乾燥性と断熱性が高く、冬に素足を置いたときの冷たさが以前とはまったく違います。見た目だけで選ぶと、日々の手入れで後悔します。素材は上質に、手入れは簡単に。今の設備であれば、この両立は十分に可能です。

光の設計。夜の浴室は、照らす面と暗く残す面で完成します

浴室の照明は、天井の中央にひとつ、という計画が今も多く見られます。真上から均一に照らすと影が消え、空間は平坦に見えます。ホテルの浴室が印象的なのは、照らす面と暗く残す面がはっきり分かれているからです。
具体的には、天井際や鏡の裏に光源を隠し、壁の面を洗うように光を流します。器具そのものは視界に入らず、壁を伝って落ちてきた反射光だけが空間を満たす。この状態をつくると、明るさの数値は控えめでも、居心地は明らかに上がります。色温度は2700K前後の電球色を選び、脱衣室・洗面まで同じ色温度で揃えてください。ここがちぐはぐだと、扉を開けた瞬間に空気が切り替わってしまいます。
昼の光も設計の対象です。窓は「明るくするため」ではなく、「外の景色を一枚だけ切り取るため」に置きます。腰から上を横長に抜く、あるいは床まで届く縦長の開口を一本入れる。開口が一つでも、その先に緑があれば、浴室は閉じた箱ではなくなります。

京都の市街地で、外に開く浴室をつくる

京都の市街地は隣家との距離が近い敷地が多く、「浴室に大きな窓は難しい」と考えておられる方が少なくありません。実際、道路側や隣家側に窓を開けても、結局はブラインドを下ろしたままになり、窓の意味がなくなります。
解決策は、外に向かって開くのではなく、内側の庭に向かって開くことです。一畳半ほどの坪庭を浴室の前に取り、周囲を壁で囲う。そこに常緑の低木を一本と、地面の仕上げを入れておくだけで、浴室からの視線は外へ抜けながら、外からの視線は完全に遮られます。夜は庭側の低い位置に照明を仕込み、下から樹形を照らします。こうしておくと、窓は黒い鏡になりません。
敷地に余裕がない場合は、窓を高い位置に振って空だけを切り取る方法もあります。いずれにしても、「開けたら何かが見える」ではなく「何を見せるか」を決めてから窓の位置を決める。この順番だけは守っていただきたいところです。

生活感を消す。出しっぱなしになるものの住所を先に決める

シャンプーやボディソープの容器は、色も形もばらばらです。これが視界の中心にあると、どれだけ素材を吟味しても、ホテルライクにはなりません。
対策は単純で、置き場所を設計に含めてしまうことです。壁面のニッチや可動式のラックを使い、洗い場に立ったときの視線より下にまとめる。カウンターは、思い切って設けないという判断もあります。カウンターは物が溜まる場所であり、掃除の手間の多くはここから生まれます。
鏡も同じです。大きな鏡を正面に置けば空間は広く見えますが、水垢の管理は確実に増えます。浴室で髪や顔を整える習慣がないご家庭なら、鏡を小さくする、あるいは設けないという選択も十分に成立します。タオル掛けは浴室内ではなく、脱衣室側に。
ホテルの浴室が整って見えるのは、私物が一つも出ていないからです。日常の暮らしでそこまで徹底するのは難しくても、出しっぱなしになるものの住所を決めておくだけで、印象は大きく変わります。

体験は、脱衣室と洗面との連続で決まります

浴室の体験は、扉を開けた瞬間から始まるわけではありません。廊下から脱衣室に入り、服を脱ぎ、扉を開ける。この一連の流れが体験です。ですから、浴室だけを整えても足りません。
脱衣室の床の色、扉の高さ、照明の色温度を浴室と揃えると、空間が一続きに見えます。特に効くのが扉の高さです。脱衣室の入口、浴室の入口、収納の扉。これらの上端が揃っているだけで、視界の中を走る線が減り、静かに見えます。
また、洗面を脱衣室から独立させるかどうかも、暮らしの質を左右します。来客も使う洗面と、家族が入浴の前後に使う脱衣の空間を分けておけば、生活感を見せずに済み、朝の混雑も緩みます。面積に余裕がなければ、間に引き戸を一枚入れ、必要なときだけ仕切れるようにしておく方法もあります。

上質さを十年保つために。断熱・換気・掃除のこと

最後に、実務の話をします。上質さは、性能と手入れの上に成り立ちます。
一つは温度です。消費者庁は、冬季に高齢者の入浴中の事故が多発することを繰り返し注意喚起しています。要因の一つとして挙げられているのが、暖かい居室と寒い脱衣室・浴室との温度差です。浴室を暖める設備を入れることに加えて、脱衣室にも暖房を確保し、住宅全体の断熱性能を上げておくことが根本的な備えになります。意匠の話と健康の話は、ここで一つにつながります。
もう一つは換気です。浴室は住まいの中でもっとも湿気が集まる場所で、換気が足りなければカビが出ます。換気は常時運転を前提に計画し、扉の給気の経路まで含めて考えます。乾燥機能は、洗濯物を乾かすためだけでなく、浴室そのものを乾かすために使うと、掃除の頻度が目に見えて減ります。
そのうえで、目地を減らす、カウンターを設けない、乾きやすい床を選ぶ。この三つを設計段階で押さえておけば、十年後も同じ表情を保てます。

まとめ。四角い部屋を、一日の終わりの場所に変える

ホテルライクな浴室は、高価な設備の集合ではありません。情報量を落とし、素材を絞り、光の当て方を決め、窓の向こうに何を見せるかを選ぶ。その積み重ねです。
図面の上では、浴室は寸法だけが書かれた四角い部屋にすぎません。けれども実際には、一日の終わりに必ず立ち寄る場所であり、家の快適さがもっとも身体で分かる場所でもあります。間取りが固まってしまう前に、この部屋でどう過ごしたいかを、ぜひ言葉にしておいてください。
LIQでは、京都の敷地条件を踏まえながら、浴室と水回り全体の計画をご提案しています。素材のサンプルや照明の見え方は、実物でご覧いただくのがいちばん確かです。

浴室や水回りの計画について、実例を見ながらご相談いただけます。

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