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注文住宅のコンセント計画。図面が固まる前に決めること

注文住宅のコンセント計画は、数ではなく順番で決まる

家づくりを終えた方に「もう一度建てるなら、どこを変えますか」とうかがうと、間取りでも設備でもなく、コンセントとスイッチの話が返ってくることがよくあります。
打ち合わせの終盤、間取りがほぼ固まったころに電気図面が出てきて、「リビングは4か所でよろしいですか」と聞かれる。判断の材料がないまま、なんとなく数を足したり引いたりして決めてしまう。後悔の多くは、この場面で生まれています。
けれど原因は、個数の不足ではありません。決める順番です。ここでは、京都で注文住宅を手がける設計者の視点から、図面が固まる前に整理しておきたいことをお話しします。

数から考えると、どこかが必ず足りなくなる

数を出発点にすると、判断の基準が「多いか少ないか」しかなくなります。足りないと困るから多めに、という発想になり、実際に暮らし始めてみると、ほとんど使わない場所に4か所あって、毎日使いたい場所には1か所もない。総数は足りているのに、位置が合っていない。これが「コンセントで後悔した」という声のほとんどです。
設計者が電気図面を描くときにやっているのは、逆の順番です。暮らしの中で電気を使う場面をまず描き、そこから位置と高さを決め、数は最後に数える。数は結果であって、出発点ではありません。
この順番を守るだけで、後悔はかなりの部分が消えます。特別な知識は要りません。必要なのは、図面に向かう前に、自分たちの暮らしの側を言葉にしておくことだけです。

最初に決めるのは、家具と家電の定位置

電気の計画は、家具の計画と一体です。ソファの背面に電源がなければ、床を配線が横切ります。ダイニングテーブルの脇になければ、卓上で使いたい家電をあきらめることになります。テレビボードの幅が決まっていなければ、配線を隠す位置も決められません。
ですから私たちは、電気図面の前に家具の寸法と置き場所を確認します。持ち込むのか、新調するのか。ソファは何人掛けか。ベッドはシングルを2台並べるのか、ダブル1台か。テーブルは伸長式か。ここが「まだ決めていません」となると、電気の位置は一般的な平均値で置くしかありません。そして平均値は、誰の暮らしにも最適化されていません。
家電も同じです。掃除機は充電式かコード式か。ロボット掃除機を使うなら、その待機場所をどこにするか。加湿器や空気清浄機を通年で置くのか、しまうのか。季節家電の収納はどこか。この一つひとつが、コンセントの位置と高さを決める根拠になります。

高さが、使いやすさと見え方の両方を決める

コンセントは、位置と同じくらい高さが効きます。一般には、床からプレートの中心まで25〜30cm程度に取り付けるのが慣例です。家具の陰に入りやすく、目立ちにくい高さだからです。ただしこれは慣例であって、正解ではありません。
たとえば、屈む動作がつらくなってくる年代の方には、腰の高さで抜き差しできるほうが快適です。カウンターの上で使う家電は、天板の少し上に設けたほうがコードが垂れません。洗濯機用は、防水パンや本体の高さの関係で床から1m前後に設けるのが一般的です。ベッドサイドは、横になったまま手が届く高さにしておくと、毎晩の充電が苦になりません。
一方で、高さを変えるほど壁面には記号が増えていきます。使いやすさだけを追えば壁は賑やかになり、見え方だけを追えば使いにくくなる。どちらかに寄せるのではなく、「毎日使う場所は使いやすさを優先し、たまにしか使わない場所は見えにくい高さに逃がす」と方針を決めておくと、一つひとつの判断がぶれません。

スイッチは、部屋ではなく動線の順番で置く

スイッチの計画は、部屋ごとに考えるとうまくいきません。人は部屋ではなく、動線の上を歩くからです。
玄関で靴を脱ぎ、廊下を通ってリビングに入り、キッチンへ回り、階段を上がって寝室へ向かう。その一連の動きをなぞりながら、どこで手を伸ばすか、どこで消したいかを置いていきます。すると、二か所以上から同じ照明を操作したい場所が自然に浮かび上がってきます。夜、リビングの照明を消してから階段を上がるのか、上がりきってから消すのか。この違いだけで、スイッチの数と位置は変わります。
高さは、床から120cm前後が一般的です。日本配線システム工業会も、住宅のスイッチ高さの目安として1200mmを示しています。ただし近年は、お子さまや座った姿勢での使用を考えて、これよりやや低く抑える考え方もあります。家族の年齢構成と、この先20年をどう見るかで決めたい部分です。
もう一点、並べる順番も設計です。左から右へ、手前の照明から奥の照明へ。壁の並びと空間の配置を対応させておくと、暮らし始めてから迷いません。

専用回路と容量は、意匠より先に押さえる

ここまでは暮らしの話ですが、電気には安全に関わる領域があります。ここは好みではなく、決められた作法に従う部分です。
住宅の電気設備は、内線規程(一般社団法人日本電気協会が定める民間規程。最新版はJEAC 8001-2022)を基準に設計・施工されます。消費電力の大きい機器——IHクッキングヒーター、エアコン、電子レンジ、食器洗い乾燥機、洗濯乾燥機など——は、ほかの機器と分けた専用の回路にするのが原則です。一つの回路にまとめると、同時に使ったときにブレーカーが落ちるだけでなく、配線に余分な負担がかかります。
近年はここに、電気自動車の充電設備が加わりました。今すぐ設置しないとしても、将来に備えて駐車場まで配管だけを通しておくといった判断は、着工前にしかできません。
なお関西電力エリアでは、家庭向けの従量電灯Aは最低料金制で、契約アンペアを選ぶ仕組みがありません(2026年8月時点)。「何アンペアで契約するか」を悩む場面がない代わりに、分電盤の回路構成をきちんと組んでおく必要があります。工事そのものは電気工事士の資格を持つ施工者が行いますが、どこで何を使うのかを決めるのは、設計の段階です。

見せない設計が、壁面の静けさをつくる

ホテルの客室が静かに見えるのは、壁に余計なものが付いていないからです。スイッチもコンセントも、必要な場所にはあるのに、視界の中心には入ってこない。この「見えないけれど、ある」という状態は、偶然ではなく設計の結果です。
住宅で同じことをするために、いくつかの方法があります。まず、集約すること。散らばった記号を一か所にまとめるだけで、壁面はかなり整います。次に、家具や建具の陰に逃がすこと。造作収納の内側、テレビボードの背面、扉を開いたときに隠れる位置。使うときだけ姿を見せる場所へ移します。
見える場所に残るものは、プレートの選び方で印象が変わります。枠を細く抑えたもの、壁と同じ色に寄せたもの、金属の質感を生かしたもの。壁の仕上げが塗り壁なのか、木なのか、タイルなのかによって、似合うものは変わります。ここを工事の最後の細部として扱うか、最初から意匠の一部として扱うか。仕上がりの品位は、この姿勢の差にあらわれます。
スイッチの数そのものを減らす方法もあります。調光や人感センサー、複数の照明をまとめて操作する仕組みを使えば、壁に並ぶ数は確実に減ります。ただし自動化を足しすぎると、今度は操作が分かりにくくなります。どこを自動にして、どこを手で操作するか。その切り分けまで含めて計画です。

将来の余白を、どこにどう残すか

家は、建てた時点が完成ではありません。子どもが個室を使い始め、働き方が変わり、家電が入れ替わります。10年後の暮らしを見通すことはできませんが、変えられる余地を残しておくことはできます。
もっとも確実なのは、空の配管を通しておくことです。壁や天井の中に配線用の管だけを先に入れておけば、後から線を通せます。テレビの位置を変えるかもしれない壁、いずれデスクを置くかもしれない部屋、屋外の設備を増やすかもしれない場所。壁を壊さずに済むかどうかは、この配管があるかどうかで決まります。
構造との関係も押さえておきたい点です。木造の柱や梁は、構造上、どこにでも穴を開けてよいわけではありません。SE構法のように構造計算で成り立っている架構では、配線のルートも設計の段階で織り込んでおく必要があります。逆にいえば、最初に織り込んでおけば、構造の安全性を損なわずに、整った納まりをつくることができます。「あとでどうにかする」が効きにくいのが、この部分です。
余白を残すこと自体にも費用はかかります。けれど、壁を解体してやり直す工事に比べれば、はるかに小さな金額で済みます。どこに、どれだけ残すか。それを絞り込むのが設計者の仕事です。

打ち合わせの前に、用意しておきたい三つ

最後に、実務的な話をひとつ。電気の打ち合わせの前に次の三つを用意しておくと、会話が一気に具体的になります。
一つ目は、家具のリストと寸法です。いま持っているもの、買い替えるつもりのもの、置きたい場所。おおよそで構いません。
二つ目は、いま使っている家電の一覧です。キッチン家電、季節家電、掃除機、日常的に充電するもの。書き出してみると、思っていたより多いはずです。
三つ目は、一日の動きのメモです。朝起きてから夜眠るまで、どこで何をするか。文章にする必要はありません。「朝はダイニングでコーヒーを淹れる」「夜はソファでタブレットを見る」。この程度で、十分に手がかりになります。
この三つがあれば、設計者は数ではなく位置から話を始められます。逆に、これがないまま電気図面に向かうと、どうしても一般的な配置に落ち着いてしまいます。

地味な決定こそ、毎日に効いてくる

コンセントとスイッチは、家づくりのなかでもっとも地味で、もっとも毎日手を触れるものです。完成写真に写ることもなければ、打ち合わせで盛り上がることもありません。それでも、暮らし始めてからの満足度に、静かに、しかし確実に効いてきます。
そして厄介なことに、これらは図面が固まってからでは動かしにくい。間取りと構造と設備は、本来ひとつづきのものです。家具の位置を決め、動線をなぞり、安全の作法を守り、将来の余白を残す。順番を守れば、使いやすさと壁面の静けさは両立できます。
数を数えるのは、いちばん最後で構いません。

LIQでは、間取りの検討と並行して照明・電気の計画までご提案しています。図面が固まる前の、いちばん自由度の高いタイミングでご相談ください。ご計画中の方も、これから土地を探される方も歓迎です。

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