↑

ブログBlog

注文住宅の間取りの決め方。設計者が考える順番

注文住宅の間取りは、決める順番で仕上がりが変わる

間取りの打ち合わせは、たいてい「何部屋必要か」「リビングは何畳か」という話から始まります。分かりやすい出発点ですが、設計者が最初に考えているのは、実は部屋ではありません。

部屋を並べるところから始めると、間取りは行き詰まる

「まず4LDKで、リビングは20畳くらい」。打ち合わせの多くはこの言葉から始まります。けれど部屋の数と広さを先に確定させてしまうと、途中で必ず窮屈になります。
理由は単純です。部屋を固めたあとに、「光をどこから入れるか」「洗濯物をどこに干すか」「玄関から手を洗うまでにどこを通るか」といった条件が次々に出てきて、それらを残った隙間に押し込むことになるからです。
家を建てた方が振り返って挙げる不満も、部屋そのものの広さより、部屋と部屋のあいだの話に集中します。収納の位置、コンセントの位置、水回りをまたぐ動線。いずれも「部屋を並べ終えたあと」に検討された結果として残るものです。
設計者が間取りを描くとき、部屋の割り付けはむしろ終盤に出てきます。先に決めているのは、敷地・時間・視線・構造という、図面には直接描かれない四つの条件です。この順番を知っておくだけで、打ち合わせで交わす言葉が変わります。

最初に決めるのは、敷地のどこに何を向けるか

同じ延床30坪でも、敷地が変われば正解の間取りは変わります。南に道路がある土地と北に道路がある土地とでは、リビングを置くべき場所が逆になることさえあります。
ですから最初にするのは、部屋を描くことではなく、敷地を一枚の白紙として眺め、そこに条件を書き込む作業です。日が長く入るのはどこか。隣家の窓はどちらを向いているか。夏の西日はどの壁に当たるか。前面道路からの視線はどこまで届くか。京都の市街地のように隣家との距離が近い敷地では、「日当たりの良い方角」と「気持ちよく開けられる方角」が一致しないことがよくあります。この食い違いをどう解くかが、間取りの骨格になります。
そのうえで、性質の近い空間を塊にまとめます。LDK、水回り、寝室と個室、玄関と収納。この四つの塊をどこに置くかを決める作業がゾーニングで、間取り図を描く前の段階にあたります。塊の単位で考えると、面積の配分と位置関係を同時に判断できます。細かい部屋割りは、骨格が決まったあとで十分に間に合います。

次に、一日の時間割で動線を描く

ゾーニングができたら、そこに人の動きを重ねます。このとき使うのは間取り図ではなく、一日の時間割です。
平日の朝、誰が何時に起きて、どこで顔を洗い、どこで着替え、どの扉から出ていくのか。帰宅してから食事までのあいだに、上着とカバンと買い物袋はどこに置かれるのか。就寝前、家族はそれぞれどの部屋にいるのか。休日はその流れがどう変わるのか。書き出してみると、家族の動きが特定の時間帯に一か所へ集中していることが見えてきます。
朝の洗面所がその典型です。四人が同じ十五分のあいだに使う場所であれば、広さそのものより「同時に二人使えるかどうか」のほうが効きます。洗面台を脱衣室から切り離す、あるいはボウルを二つにする。どちらも面積を増やす話ではなく、時間の重なりをほどく工夫です。
間取りは空間の設計であると同時に、時間の設計でもあります。図面の上には現れない渋滞を、先に見つけておくことです。

家事動線は「距離」ではなく「往復の回数」で考える

家事動線というと「短ければ短いほど良い」と語られがちですが、実際に効いてくるのは距離そのものより、その距離を一日に何度歩くかです。
洗濯を例にすると、洗う・干す・取り込む・畳む・しまう、という五つの工程があります。この五つが家じゅうに散らばっていると、一回の洗濯のたびに家の中を何往復もすることになります。洗濯機の位置、室内干しの場所、畳むための台、そして衣類の収納。この四つを一筆書きでつなげられるかどうかで、毎日の負担はまったく変わります。
一方で、年に数回しか使わない動線を短くするために、毎日使う場所を犠牲にするのは本末転倒です。回数の多い順に並べ、上位三つだけを徹底して短くする。それ以外は多少遠回りでも構わないと割り切るほうが、結果として暮らしやすい家になります。
すべての動線を最適化しようとすると、廊下ばかりの間取りになります。どこを短くしないかを決めることも、設計の仕事です。

光と視線は、窓の大きさではなく「抜け」で決まる

明るい家にしたい、というご要望に対して、窓を大きくすることだけが答えではありません。隣家が近い敷地では、大きな窓がそのまま「隣の壁がよく見える窓」になってしまうこともあります。
効くのは、視線が奥まで通る方向を一本つくることです。玄関を入って正面に庭の緑が見える。ダイニングに座ると、中庭を越えてその先の空まで視線が届く。人は視線が抜ける距離で広さを感じますから、床面積を増やさなくても、抜けが一本あるだけで体感は変わります。
光についても同じで、上から落ちてくる光、細く長く差し込む光、白い壁に反射して回り込む光では、部屋の印象がまったく違います。建築基準法では住宅の居室に必要な採光のための窓面積が定められていますが(原則として床面積の七分の一以上。一定の照明設備を設けた場合は十分の一以上まで緩和/2026年8月時点)、これはあくまで最低ラインです。基準を満たしていることと、気持ちよく明るいことは別の話だとお考えください。
どの方向に抜きたいのか。それを決めてから、窓の位置と大きさを決めます。

面積を足す前に、「兼ねられる場所」を探す

予算の話になると、まず削られるのは面積です。けれど面積を減らす前に、見直せるものがあります。移動のためだけに使われている廊下と、役割のない余白です。
国の住生活基本計画では、豊かな住生活の目安として誘導居住面積水準が示されており、戸建てを想定した一般型では四人世帯で125平方メートル(約38坪)とされています(2026年8月時点)。ただしこれは政策上の目安であって、同じ面積でも使われ方によって体感はまるで変わります。
たとえば階段脇の通路をわずかに広げてカウンターを設ければ、子どもの勉強コーナーになります。寝室へ向かう通路の壁面をそのまま本棚にすれば、書斎を一部屋つくらずに済みます。玄関の土間を広げておけば、ベビーカーも自転車も収まり、外部に物置を置く必要がなくなる。通り過ぎるだけだった面積を、役割のある場所に変えていく発想です。
部屋をひとつ増やせば、その部屋のぶんだけ壁とドアと廊下が増えます。「一部屋足す」より「一か所に兼ねさせる」ほうが、面積も費用も抑えながら、暮らしはむしろ豊かになります。

構造の制約を先に知っておくと、間取りはむしろ自由になる

間取りの検討がかなり進んだところで「ここには柱が必要です」「この壁は動かせません」と告げられる。よくある行き違いですが、これは構造の話を後回しにした結果です。
一般的な木造軸組工法では、耐力壁の量とその配置バランスによって建物の強さを確保します。そのため、大きな開口を取りたい場所や広いワンルームにしたい場所ほど、周囲に壁が要るという関係が生まれます。この前提を知らないまま間取りを描き進めると、あとから壁が増えていくことになります。
LIQが採用しているSE構法は、木材を専用金物で剛接合するラーメン構造で、構造計算を全棟で行う工法です。柱や壁の位置に自由度が生まれるため、大きな開口や柱の少ない大空間を、構造の裏づけを取ったうえで計画できます。二階にリビングを持ち上げる、一階の一部を駐車スペースとして開ける、といった選択もしやすくなります。
どこまでができて、どこからが難しいのか。それを最初に共有しておくと、間取りの検討はかえって自由になります。

決める順番が、後悔の量を決める

間取りは、部屋の数から決めるものではありません。敷地を読み、一日の時間を描き、視線の抜ける方向を決め、構造の条件を知る。この順番をたどってはじめて、部屋の割り付けが意味を持ちます。
そして間取りは、家が建ってしまうと最も直しにくい部分です。壁紙も照明も設備も、将来のどこかで取り替えられます。けれど動線と光の入り方は、簡単には変えられません。だからこそ、図面を描き始める前の時間にこそ、いちばん価値があります。
打ち合わせの席で「4LDKで」と伝える代わりに、「朝はこの順番で動きます」「この方向に抜けが欲しいのです」と話せるようになれば、出てくる図面は確実に変わります。設計者は、その言葉を待っています。

敷地の条件や暮らし方に合わせた間取りの考え方は、実際の図面を前にしてお話しするのがいちばん確かです。ご計画中の土地がある方も、これから探される方も、どうぞお気軽にご相談ください。

家づくり相談会・資料請求のご案内

Back to listリストに戻る

LINE デジタルカタログ 住まいの無料相談会