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注文住宅の断熱性能。UA値とC値の正しい読み方

「暖かい家です」という言葉を、数値で確かめる

家づくりの打ち合わせで、断熱の話は必ず出てきます。ただ、そこで交わされる言葉は「うちは高断熱です」「夏涼しくて冬暖かい家になります」といった、比較のしようがない表現になりがちです。
住宅の断熱性能には、共通のものさしがあります。UA値と、気密性能を表すC値。この二つを読めるようになると、各社の説明を同じ土俵に乗せて比べられるようになります。逆に言えば、この数値を出さない説明は、そもそも比較の対象になりません。
この記事では、京都で注文住宅を設計している立場から、UA値とC値が何を意味しているのか、どの水準を目指すと暮らしがどう変わるのか、そして数値を追いかけすぎたときに何を失うのかまでを、順を追ってお話しします。

2025年4月から、省エネ基準への適合は「義務」になりました

まず、制度の現在地を押さえておきます。2025年4月1日以降に着工するすべての新築住宅は、省エネ基準への適合が義務づけられました。改正建築物省エネ法によるもので、それまで住宅は届出などにとどまっていた規制が、適合しなければ建てられない要件に変わっています。
求められる水準は、断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上です。ここで注意していただきたいのは、等級4は「最低ライン」だということです。かつては等級4が最高等級でしたが、2022年に等級5が、続いて等級6・7が新設され、現在の等級4は制度上の下限になりました。
そのため「省エネ基準に適合しています」という説明は、2026年現在では性能の高さを示す言葉ではありません。法律を守っている、という意味しかない。どこまで上を目指すのかは、依然として施主と設計者が決める領域として残されています。

UA値は、家全体からどれだけ熱が逃げるかを表す

UA値は「外皮平均熱貫流率」の略で、屋根・壁・床・窓といった家の外側全体から、どれだけ熱が逃げやすいかを表した数値です。単位はW/㎡・K。数値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを意味します。
重要なのは、これが家全体の平均値だという点です。壁にどれだけ厚い断熱材を入れても、窓が弱ければ平均は下がりません。実際、一般的な住宅では、冬に逃げていく熱のかなりの割合が窓などの開口部から出ていきます。断熱の話が窓の話から始まるのは、そのためです。
もう一つ、UA値は設計上の計算値であるということも知っておいてください。図面と仕様から算出される数値であり、施工の丁寧さは反映されません。計算上は優秀でも、現場で断熱材に隙間ができていれば、実際の性能は落ちます。この「計算と実物の差」を埋める指標が、後述するC値です。

京都は6地域。等級5・6・7で、暮らしはどう変わるか

UA値の基準は全国一律ではなく、気候に応じて1〜8の地域区分ごとに定められています。京都市は6地域です。この6地域における各等級のUA値基準値は、等級4が0.87以下、等級5が0.60以下、等級6が0.46以下、等級7が0.26以下となっています。
数値だけでは実感が湧きにくいので、暮らしの側から整理します。等級4は、暖房を入れた部屋は暖かいものの、廊下や脱衣室との温度差が残る水準です。等級5はZEHの断熱水準にあたり、長期優良住宅の認定でも求められる、現在の実質的な標準といえます。
等級6になると、暖房の効きが変わります。家全体を穏やかに暖めても電気代が跳ね上がらず、間仕切りを減らした大きな一室空間や吹き抜けが、寒さの原因になりにくくなる。私たちが開放的な間取りをご提案するとき、等級6前後を一つの目安に置いているのはこのためです。
等級7は最高等級ですが、サッシや断熱材のグレードが大きく上がり、壁の厚みも増します。費用対効果と、間取り・開口部の自由度への影響を見たうえで判断すべき水準です。全員が目指すべき数値ではありません。

C値には法律上の基準がない。だからこそ聞く価値がある

C値は「相当隙間面積」の略で、家全体の隙間の合計面積を延床面積で割った数値です。単位はc㎡/㎡。1.0であれば、床面積1㎡あたり1c㎡の隙間があることを意味します。
ここで知っておいていただきたいのは、C値は現行の省エネ基準に規定がないという事実です。かつての基準では地域ごとの数値が示されていましたが、その後の改正で削除され、現在は法的な義務も基準値もありません。つまり、C値を測るかどうかは、つくり手の姿勢の問題です。
そしてC値は、UA値と違って計算では出せません。完成した建物で気密測定を行って初めて分かる、実測値です。施工の精度がそのまま数字に出るため、性能を本気で担保しようとしている会社かどうかが、ここに表れます。
気密が甘いと、いくらUA値が良くても隙間から空気が出入りし、計算どおりの性能は出ません。24時間換気も設計どおりに働かなくなります。断熱と気密はセットであり、片方だけでは意味をなさない、と考えてください。打ち合わせの場では「気密測定は実施していますか。実測値はどのくらいですか」と尋ねてみてください。答え方で多くのことが分かります。

性能への投資には、効果の出やすい順番がある

予算は有限です。すべてを最高グレードにするのは現実的ではないため、私たちは順番を意識して仕様を決めています。
第一に、窓です。前述のとおり熱の出入りが最も大きい部位であり、同じ費用をかけたときの改善幅がいちばん大きい。樹脂サッシか、ガラスは複層かトリプルか、方位ごとに仕様を変えるか。ここを詰めるだけで数値は大きく動きます。
第二に、施工品質としての気密です。気密は高価な材料で買うものではなく、防湿シートの重ね方や配管まわりの処理といった、手間の積み重ねで決まります。費用対効果という意味では非常に優秀な投資先です。
第三に、断熱材のグレードと厚みです。壁の充填断熱に加えて外側にも断熱層を設けるかどうかで、コストと壁厚が変わります。等級6を超えて上を目指す段階では、ここが主な調整項目になります。
この順番を守らずに、断熱材だけを厚くして窓が普通のまま、という仕様をときどき見かけます。数値も体感も、期待したほどには上がりません。

夏の暑さは、断熱だけでは解決しません

断熱性能を上げれば夏も涼しい、と単純には言えないところが住宅設計の難しさです。夏の室温上昇の主因は、窓から入ってくる日射熱だからです。断熱は熱の移動を遅らせますが、入ってきてしまった熱を消してはくれません。
そのため省エネ基準では、UA値と並んで冷房期の日射熱の入りやすさを示す指標も定められています。設計では、南面は軒や庇で夏の高い日射を遮りつつ冬の低い日射は取り込む、西面の開口は絞る、といった調整を行います。数値表よりも、方位ごとの判断の積み重ねが効いてきます。
京都盆地の夏を経験された方ほど実感されると思いますが、断熱等級を上げることと、夏の日射をどう扱うかは別の設計課題です。両方を同時に解いて、はじめて一年を通じて快適な家になります。

数値は目的ではなく、設計を成立させるための前提です

ここまで数値の話をしてきましたが、私たちは、性能値を競うこと自体を目的にはしていません。数値は、つくりたい暮らしを成立させるための前提条件だと考えています。
たとえば、大きな開口部から庭を望むリビング。天井の高い、間仕切りの少ない一室空間。二層をつなぐ吹き抜け。こうしたホテルライクな空間は、断熱・気密の裏づけがないと、冬に寒く、夏に暑い場所になってしまいます。開放的な設計を選ぶほど、性能は必須の条件になる。
同時に、性能を追うあまり窓を小さくし、間取りを閉じてしまえば、数値は良くても暮らしの豊かさは失われます。LIQでは、SE構法による構造の自由度を使って必要な開口と大空間を確保したうえで、そこに見合う断熱・気密の仕様を組み立てる、という順序で設計しています。数値のために設計を諦めない。設計のために数値を諦めない。この両立が、私たちの考える上質さです。
そして温度ムラのない家は、静かです。エアコンが強く回り続けることもなく、部屋を移動するたびに身構えることもない。性能とは、最終的には空気の質の話であり、それは間違いなく住み心地の一部だと考えています。

まとめ:仕様が固まる前に、数値の話をしてください

最後に、要点を整理します。
2025年4月以降、省エネ基準への適合は義務であり、断熱等級4は最低ラインです。UA値は家全体の熱の逃げやすさを表す計算値で、京都市が属する6地域では等級5が0.60以下、等級6が0.46以下。開放的な間取りを望むなら等級6前後が一つの目安になります。C値は法的な基準がない実測値であり、測定しているかどうかがつくり手の姿勢を示します。投資の順番は、窓、気密、断熱材。そして夏の快適さは、断熱ではなく日射遮蔽の設計で決まります。
これらはいずれも、間取りとサッシの仕様が固まる前でなければ、大きくは動かせない項目です。窓の大きさと位置が決まってしまってから性能を上げようとすると、選択肢は限られ、費用も膨らみます。
LIQでは、ご計画中のプランや他社のお見積りを拝見しながら、その仕様がどの水準にあたるのか、どこに手を入れれば効果が大きいのかを一緒に整理するご相談を承っています。数値の読み方から確認したい、という段階でも構いません。ご希望の暮らしと予算に対して、どこまでの性能が妥当なのかを、具体的にお話しさせていただきます。

断熱・気密の考え方や設計事例について、詳しくご説明しています。

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