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木造の新築特有の香り -木が香るわけ-

こんにちは。広報担当の大坪です。
先日、弊社工務部が建材カットを行っていたところ、事務所中に木の香りが充満し始めたため何をカットしているのか一目(嗅?)瞭然で、木の香りってすごいなと改めて思うエピソードでした。

なぜ木の香りは一瞬でわかるほどよく香るのか?
「新築の香り」とよく言いますが、なぜあの香りがするのか?

今日は木・木材についてを綴っていきましょう。

木の香りの正体

お風呂のリラックスグッズでヒノキボールがあったり、温泉などに行くと日本旅館だと風呂桶がヒノキだったり、とにかくヒノキは「香り」「リラックス」の代名詞のような存在に思う方も多いのではないかと思います。(花粉は勘弁…)

ヒノキに限らずスギ、ヒバなど沢山の木が建材として使われます。そんな木を使った新築のあの香り。じつあの香りは、直訳すると“植物が殺す”と言う意味の「フィトンチッド」と言う成分が関係しています。

物騒な直訳ですが、幹を痛める菌・細菌から自らを守ったり、一度生えたらそこで生き抜くために周囲の植物・生物を殺す成分、「フィトンチッド」を出すのです。
このフィトンチッドが、森に生えている木でなくとも建築に使う木材にも含まれているため、「木造新築での香り」のイメージになったと言えるでしょう。

建材として強度などを考えて使用していたのはもちろんでしょうが、物騒な意味の「フィトンチッド」は人間には大変良い効果をもたらしてくれるので、無意識に生活に直接結びつく様々な用途で「木」を利用してきたわけですね。

化学で認められたフィトンチッド

フィトンチッドは様々な役に立てられており、除草剤、虫よけや殺虫剤、ひいては抗生物質にも利用されています。

フィトンチッドの元は、木が発散する「テルペン類(精油)」と言う物質で、これが揮発したものがフィトンチッドです。植物は自分を守り・成長するために大気中にフィトンチッドを放出しています。
この揮発したテルペン類を浴びる行為を「森林浴」と呼び、テルペン類が部分酸化する際にありがたい“マイナスイオン”が現れます。

このマイナスイオンの効果は科学的に次のような効果が認められています。
◇害虫忌避
◇有害菌の不活性化
◇消臭効果
◇精神安定効果(リラクゼーション)

さらにありがたいことに、次に示すような効果により優れた医療・美容効果が認められています。
◇大脳皮質を活性化し調整力を高める
◇高血圧を抑制
◇神経系の緩和
◇皮膚病・呼吸器系疾患の改善
◇アレルギー性疾患の予防、回復等

現代でも戸建て住宅の80%以上は木造建築の日本ですが、共同住宅(マンション・アパート等)は鉄骨造や鉄筋コンクリート造が多いですね。近年、なんだか怒りが抑えられなかったり気持ちの余裕がない人が昔より多いと言われますが、ストレス社会になってしまったのは木造建築暮らしの人間が減ったのも一因では?と結構本気で思ってきました。(部屋に木工グッズたくさん置こう。。。)

木の種類による違い

お風呂グッズとしてヒノキボールはかなりメジャーだと思います。旅館のヒノキ風呂に、ヒノキの家。ヒノキは日本人には特に生活上なじみの深い木ですが、なぜでしょうか?

前述のテルペン類=精油ですが、木によってその種類や含有量は様々です。そのため、木の種類によって香りやその強さが違うのです。その違いが「ヒノキの香り」「スギの香り」などとそれぞれを特徴付けているのですね。

―ヒノキ― 針葉樹 ヒノキ科ヒノキ属

さて、日本人がヒノキを好む理由ですが、これは様々あるようですが一言で言うならば「文化」と言えるかと思います。まずヒノキは、まっすぐに耐久性・強度に優れており地震が多い日本では建材にとても適しています。そしてその香り、白く気品のある色合い、やわらかな触り心地など、高級木材として珍重されてきました。

日本書紀においてヒノキは、「スサノオノミコトが胸毛をまき散らすとヒノキになった」「スギ・クスノキは舟に、ヒノキは宮殿に、マキは棺に使いなさい」などと書かれています。
そして伊勢神宮の建材として使われていることから、祀られている「天照大神(アマテラスオオミカミ)」が太陽神だからその建材は「日の木」だとか、神聖な「霊(ひ)の木」だ、などから「ヒノキ」となったと言われています。

そんなヒノキの特徴は、
・強度や耐久性が高く、曲げ、圧縮、引っ張りの強度が高い
・風雨や浸食に強い
・調湿機能や紫外線からの保護機能などがある
・伐採後1000年以上強さを維持する

実際に歴史上でも、宝物を保管する正倉院、法隆寺、各所の城郭建築などの重要な建築に使われてきました。当時の人々は経験則から選んで使用していたのでしょうが、現代の科学によってヒノキの素晴らしさは改めて証明されているのです。

―スギ― 針葉樹 ヒノキ科スギ属

スギは、既出のヒノキに倣って日本書紀によると、スサノオノミコトの髭を抜いて植えるとスギになったそうです。さておき、日本書紀の記述からもヒノキと同様古来より重宝されていたことがわかりますね。

スギは加工しやすいのが特徴のひとつです。日本書紀の「スギ・クスノキは舟に」と言う記述はそこから来ていると考えられます。建材はもちろん樽や桶などの日用品にもよく使われ、現代のように鉈やノコギリ、ノミがなかった時代に、木目が真っすぐで割りやすく加工しやすいスギは、大変貴重な材料だったことでしょう。

・成長が早く、まっすぐ高く育つ
「率直(すぐ)になる木」からスギと名付けられたとされています
・大気中の有害ガスを吸収・吸着して空気を浄化する性質が強い
・通気性や防水性が高い
・空気の含有量が多く軽量で柔らかさもあり扱いやすい

スギはその生育数の多さや大きさから、古来より相当に親しまれてきた木材なのです。

―ヒバ― 針葉樹 ヒノキ科アスナロ属

ヒバは香りが大変強いことでも有名です。香りが強いと言うことは含有精油(テルペン類)が強力なのか、ヒバの害虫忌避力・抗菌力はとても強いです。ただ、その香りの強さは好みが分かれるところでもあります。

このヒバの特徴をよく表しているのは、シロアリ被害の少なさと腐りにくさと言えるでしょう。よく似ているヒノキもシロアリや腐朽に強いですが、ヒバの耐久年数はヒノキ同様、シロアリ生息地での実験に至ってはヒノキの倍以上の耐久年数だそうです。

・腐りにくい、耐朽性が高い、かびにくい
・病原性の菌類や細菌類への抗菌作用を持つ
・防虫・殺虫作用がとても高い
 精油を含ませたろ紙でのゴ〇ブリ忌避効果実験では防虫剤同等の忌避効果が、チャバネゴ〇ブリにヒバ精油を使用すると100%の殺虫結果が、シロアリ実験では心材には対蟻効果、精油には殺蟻効果が確認できたそう。
・抗腫瘍効果を持つ
 ヒバ精油にはヒノキチオ-ル(β-ツヤプリシン)やツヨプセン、クパレン他多くの成分が含まれていますが、ツヨプセンには抗腫瘍効果があることがわかっています。

ヒバの耐久性の強さを証明しているのが、岩手県の中尊寺です。
中尊寺の93%は青森ヒバで建築されているそうです。そして建立から約800年後の復元修理の際には、全体の7割以上のヒバ材が再利用可能だったそうです。青森ヒバは伊勢神宮の宇治橋にも使われています。

―マツ― 針葉樹 マツ科マツ属

マツにはアカマツとクロマツがあり、アカマツは内陸に多く、クロマツは耐潮性があるため海沿いの防風林としてよく見られます。

・スギやヒノキと比べて更に強度があって粘り強く密度が高い
・ヒノキやスギにくらべて匂いが強くない
・マツの精油は炎症防止や消臭、リラックス効果などが、他の樹木から取れる精油よりも高い
・建材は経年変化と共に、素晴らしい色艶を出す →特に高級床材として発揮

マツも前述の木々のように「古事記」「日本書紀」などで山ほど記述されています。特に古事記でヤマトタケルノミコトがマツを“親しい友よ”と表現する歌があり、日本人のマツへの愛すら感じますね。盆栽と言えばマツと思いつく事や、“松竹梅”“門松”など祝い事などに常々登場することからも、いかに物質的・精神的両側面で日本人と共にあるかがわかります。

―最後に―

木の種類はまだまだたくさんあり書ききれませんが、私たち日本人に特に深く密接に関ってきた4種類だけを紹介しました。

日本の国土はこれだけ人口が増えた現代でも、その約7割が森林です。(国土に対しての森林面積は先進国中で世界2位。1位はフィンランド)そのうち5割が天然林、4割が人工林。残りは無立木地・竹林です。
当然に、古代より木を用い木と共に文化が育ってきました。そんな中、戦後の植林が成熟し活用するべき現在、高齢化による人手不足や輸入事情が絡み合い、放置されている森林資源も多いです。
近年はSDGsの観点から木造建築の奨励が進みつつあります。日本人に一番適した木造の家。建築会社・工務店として、大切にその文化を守りたいと思います。

余談ですが、手軽に木を生活に取り入れるのであれば精油のアロマテラピーがおすすめです。たくさんの種類があり、ご自身の状態に合わせて選べば整うこと間違いなし。精油の成分と効果に詳しい専門家がいるショップでぜひ相談してみてください。

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