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日本各地の住宅 ―気候と暮らしの文化―

こんにちは、広報担当の大坪です。
寒くなりましたね。冬本番はこれからだと言うのに、1番暖かいダウンコートを既に引っ張り出してしまい、2月へ向けて不安になっているところです。

私たち人は季節によってまとう衣服を変え、気候に対応していますね。哺乳類は毛が生え変わったり、爬虫類なら日向ぼっこで体を温めたり。では住宅はどうでしょうか?
住宅は季節によって外装を変えるわけには行きませんね。きっと地方やエリアによって工夫があるはずです。今日は地域による住宅の特徴をレポートしたいと思います。

大きな分類

日本の国土は南北に長いため、北は亜寒帯から南は亜熱帯まで様々な気候区分に属しています。そして日本の気候区分は画像のとおり大きく6つに分けられています。

その中から
 ・寒冷地(“北海道の気候”ほか年間平均気温の低い亜寒帯のエリア)
 ・寒暖差の激しい地域(内陸性(中央高地)の気候)
 ・1年を通して温暖な地域(南西諸島の気候)
の3つと、日本の特徴的な気候影響のある地域、
 ・寒冷地の中でも特に豪雪地域
 ・台風の影響が大きい地域

上記5つの特徴的な地域の住宅を見て行きましょう。

寒冷地

寒冷地は言わずもがな、寒さの対策が第一となります。冬になると1日中マイナスの気温と言う日も多いため、「寒さを入れないこと」「熱を逃がさないこと」「体感温度を上げること」この3つが非常に大切です。
では、この3つを満たす住宅とは?

◇高断熱
高断熱とは断熱性が高い事をいいます。高断熱の住宅は外気が壁を伝わって室内温度へ影響してしまうのを抑えることができます。具体的には
 ・屋根、外壁、床下に性能の高い断熱材を使用
 ・複層ガラスなど断熱性の高い窓を採用
上記のような方法で断熱性を高めます。

断熱材には主に下記の3種類があります。
 ・無機繊維系
  鉱物などの無機素材を原料とし、繊維状の素材が空気層をつくり断熱効果を発揮します。
 ・発砲プラスチック系
  発砲させた合成樹脂をボード状にした断熱材。細かい気泡が断熱性を高め、結露に強い特徴があります。断熱性能の高さや施工のしやすさから導入が増えています。
 ・自然素材系
  越しや羊毛・コルク等の自然生まれ素材からつくる断熱材です。調湿や防虫機能が高く、吸音性も併せ持つ素材もあります。

上記のような断熱材を使って、主に「充填断熱」「外張り」「吹き込み」の3つの工法を費用に応じて用います。

そして寒冷地代表とも言える北海道では、窓のサッシにも理にかなった文化が。
通常サッシと言えばアルミサッシを思い浮かべると思いますが、北海道では樹脂や木製サッシが主流。熱伝導率が低いため断熱性があるのですね。本州では効果な樹脂や木製サッシが、北海道では市場価格が逆転しているそうです。

画像左:発砲プラスチック系断熱材を吹き付けた壁
画像右:YKK AP樹脂サッシ 「マドリモ 内窓 プラマードU」
引用:https://www.ykkap.co.jp/consumer/satellite/sp/healthcare-mado/

◇高気密(気密性が高い)
高断熱で寒さをシャットアウトしたら、次は保温ですよね。
気密性とは、いかに隙間を減らし外と室内の空気の出入りを少なくしているかの事です。隙間風なんて昭和の歌謡曲の世界でしょ!と思った方、違うんです。体で感じる隙間なんて現代では論外、気づかないようなほんの小さな隙間が影響を与えるのです。

気密性が低いと言う事は隙間があると言う事ですからすなわち、花粉、チリ、PM2.5など、招かれざる物質も侵入してくると言えます。
空気だけでなくアレルギーなどにも重要な性能ですね。

◇体感温度が高い
これは高断熱・高気密が大変重要です。
寒冷地でない地域だと自分が今使っている部屋のみを暖めるのが普通だと思いますが、北海道では高気密・高断熱のため家中の保温ができ、部屋ごとの温度差を感じにくい健康的な環境で過ごすことができます。
私は友人に北海道出身者が結構いるのですが、寒い場所は無理!と言うと皆口をそろえて「実家にいたら薄着だよ」「北海道はそんなに寒くないよ、建物から出ないもん」と言います(笑)

体感温度が高い暖かい環境は体の健康とも密接に結びついているようで、WHOの考察データに
「冬の死亡者数は、寒冷な気候の国よりも温暖な国でより多い」とあります。
その理由の1つとしてWHOは
「一つの側面として、寒冷な気候の国は断熱が施された住宅のため室内が暖かい。」
と言っています。まさに北海道の住宅環境ですね。
他にも、
・室温と血圧との関係を評価した6つの研究のうち、寒い家で過ごす人々がより高い血圧となっていることが見いだされた。
・日本における2つの研究を含め、全ての研究において低温と高血圧に相関性が見られる。
などが考察として挙げられています。

家全体の温度を高断熱によって暖かい状態で一定に保つことは、風呂場と脱衣室など温度差で起こる“ヒートショック”も防ぐことができますので、高断熱がいかに生活に密着した性能であるかがわかりますね。

画像:国土交通省補助事業「スマートウェルネス住宅推進調査委員会」の資料

↓温熱環境と健康についての様々な研究結果がまとめられています。

→こちらから

 

豪雪地帯

寒冷地の例として北海道事情を例に出してきましたが、寒冷地にはとにかく降雪量が多く雪深い“豪雪地帯”があります。そういった地域はとにかく降り積もる雪から家と自分たちを守るのが大変。そんな地域の住宅は、どんな工夫がされているのでしょうか?

◇ポイントは屋根&雪かき
豪雪地帯に暮らす方々にとって雪かきが大変であり危険な作業なのは、今も昔も変わりません。雪による死者のほとんどが除雪作業中の事故だそうで、いかに危険な作業なのかがわかります。

そこで豪雪地帯の注文住宅は、屋根の性能が大変重要になってきます。
 ・雪が積もらない屋根
 ・雪かきが不要な屋根
この2つが必須と言えます。

一昔前までは屋根に積もった雪をどう扱うかが肝になっていたわけですが、宅地が狭くなってきた影響で落とした雪を自宅敷地内で処理しきれなくなると言う問題が発生しました。
そこで生まれたのが「無落雪屋根」や「屋根融雪」です。

◇無落雪屋根
無落雪屋根とは、その字の通り落雪しない屋根です。そのフラットな屋根は雪下ろしがいらない構造になっています。
無落雪屋根にも大きく3種類あります。
 ・スノーダクト方式…屋根中央に向かって勾配があり、溶けた雪や雨水を排出するダクトが設置されています。
 ・フラットルーフ方式…ほとんど平の屋根で陸屋根(ろくやね)とも呼ばれ、わずかな傾きによって太陽光で溶けた雪が流れていく構造です。
 ・勾配屋根方式…三角屋根などに雪止めを設置し、落雪を防ぐ構造です。

画像:陸屋根



そして雪を落とさないと言う事は屋根に雪の重量がかかってきますので、当然その重みに耐えられる躯体構造である必要があります。積雪は、1㎥あたり約100kg、圧縮された雪だと500kgにもなるそうです。建物が積雪の重量に耐えられない場合、構造にゆがみが出て建具が開かなくなったり天井が陥没したり、様々な悪影響を及ぼす可能性が非常に高いです。
リフォームで無落雪屋根にする場合は、建物自体の強化も行わなければなりませんね。

◇屋根融雪
屋根融雪とは、屋根に直接パイプやヒーターを設置し、屋根に積もった雪を灯油や電力などの熱を使って水に変え処理する方法です。融雪システムの種類としては、「井戸水(地下水)式」「灯油ボイラー式」「電熱式」などがあります。
その中でも電熱式は、屋根に直接電気ヒーターを設置するので曲面や軒先など、どんな形状にも対応ができ低コストで導入できるようです。

画像:消雪パイプが設置された屋根



ちなみに世界遺産の岐阜県“白川郷”の合掌造りは、中世から続く豪雪に対応する技術と知恵の結晶です。

画像左:雪の白川郷
画像右:合掌造り構造図
    出展:白川村WEBサイト/https://www.vill.shirakawa.lg.jp/1231.htm

白川郷の合掌造りと言えばあの急勾配の茅葺屋根。45度から60度の大きな勾配で雪を落としやすい構造になっています。更に雪を屋根から落としやすくするため、建物は必ず南北を全面・後面として建築します。これにより屋根面は東西に向く事になり、午前中は東面、午後は西面の雪を日光が溶かすよう狙っているのです。これぞまさに「先人の知恵」。

そして合掌造りの家屋に入ると広い空間がありそれにも関わらず意外と暖かいらしく、その熱源は囲炉裏のみだそうです。この囲炉裏は常に薪をくべ火が絶えず、昭和の戦前までは魚を焼いたり鍋やお湯を温めでいました。その煙が防虫の役割を果たし、保温や防水の効果も高めるそうです。

寒暖差の激しい地域

内陸性の気候は、夏と冬、1日の中での寒暖差(日較差)が激しく、降水量が少なく乾燥しがちと言う特徴があります。“内陸性の気候”エリアの中でも特有の気候が明瞭な長野県は、北部は日本海側の季節風の影響で豪雪、中部・南部は内陸性らしい気候です。

◇やはり、「高気密・高断熱」
季節の寒暖差・日較差が激しいと言うことは、家の中の温度を一定に保つ「高気密・高断熱」が重要です。更にエリアによっては冬の降水量(積雪)が多かったり湿度が高かったりするため、気密性が高い事は溶けた雪の染み込みを防いだり過剰な湿気の侵入を防ぎ、外張り断熱+通常の断熱の併用によって外気と室内気温の差で発生する結露を防ぐなど、徹底的な「高気密・高断熱」がポイントになるようです。

1年を通して温暖な地域

南西諸島の気候と言われる奄美大島や沖縄の気候は、1年を通して気温が高く雨が多く湿度が高いエリアです。

沖縄県の家は実は鉄筋コンクリート造(RC造)が多いのだそうです。戦争でほとんどの家を失いアメリカの2×4(ツーバイフォー)工法の家を提供されたのですが台風やシロアリで被害を受け、対して米軍家族用に建てていたRC造建物の台風やシロアリへの強さを知り、それに倣い好んでRC造の家を建てて行ったようです。しかし、沖縄の伝統的な住宅は当然木造です。そして沖縄の風土には木造が適していることから、2015年頃から新築では木造の家が増えつつあるようです。

◇高温多湿に対応する
沖縄は春や夏に数回行ったことがありますが、その日射量はすごいものがあります。それなのに高い建物が無く、日陰を求めて車へ避難したことが幾度とありました。その熱を遮り室内温度を涼しく保つには、RC造は大変不向きです。日射熱を蓄えてしまい、室内を暖める効果を発揮してしまうのです。対して木造は、木の内部に細かい気泡の層があり断熱性が高いため、日射熱を遮る事ができ沖縄の風土に向いています。
また無垢の木には調湿機能があり、湿度が高いときは吸湿し乾燥すると湿気を放出します。更に、木は結露しにくいためカビの発生を抑える事が出来ます。

更に伝統的な琉球住宅の間取りは間仕切りが少なく開放的で、風通しが良い構造です。現代の住宅でも、風土に合った伝統建築に倣い開放的で間口が広い間取りの家が多いようです。

◇基礎からシロアリ対策
一般的に、九州から沖縄にかけてはシロアリ被害に合いやすいと言います。その為、外周部の立ち上がりを広く高く構えるなどの工夫で、シロアリが登りにくく食い破りにくい基礎を作ることができるそうです。
また、抗菌性・防虫性の高い無垢檜(ヒノキ)の赤身の心材を使用するなどの対策もあります。

台風の影響が多い地域

大型台風の上陸は体験しないとわからないものがあります。ものすごい風に停電、物が飛びぶつかる音…そして台風の目が来たら惨状確認に外に出る。この時はまだ片付けはしません、台風の目が通り過ぎればまた暴風雨がやってくるからです。

そんな危険の多い台風ですが、台風が多い地域の工夫を見て行きましょう。

◇雨戸
台風襲来によく合う地域は、飛来物から窓ガラスを守るため&雨の吹込みを防ぐため、雨戸が必ずと言っていい程設置されています。台風の予報や風の様子を見ながら「そろそろかな」と雨戸をがっちりと閉めて備え始めるのです。
因みに防犯シャッターの高性能化が進んでいますが、台風時停電になると開閉できなくなるため、九州では手動の雨戸が主流です。

◇床高を高くする
九州は台風のみならず梅雨時期の豪雨もあります。そして湿気も多い。そうなれば自然と、湿気対策と浸水対策で床高の高い家になります。中型犬がなかなか上がってこられないほどの高さがあります。

◇屋根
沖縄の伝統的な住宅であれば、赤瓦が使われており漆喰でがっちりと埋め込むように固定されています。しかし通常の湿式工法(漆喰や土で固定する)の場合瓦の重さのみで風に耐える事になるため、漆喰や土が崩れ飛ばされやすかったのです。しかし現代では技術が発展し様々な工法が生まれ、飛ばされにくい屋根瓦の実現が可能になっています。
さらに屋根の面が多いほど風を複数の面で受ける流れを作りやすく、強風に強いと言われています。その為2面の霧妻や4面の寄棟の屋根が多く採用されています。
九州では瓦屋根の住宅が今でも多いのです。

画像:沖縄の赤瓦の古民家



◇防風林を植える、防風柵や高い外構を造る
外側から家をガードする考え方です。飛来物や風の直接の影響を和らげる対策です。防風林は新築の場合成長に数年かかりますので注意が必要です。

画像:沖縄の石垣と屋敷林 出典:不動産・住宅サイトSUUMO

石垣と屋敷林で風の勢いを弱め、抜けてきた風は軒が受け寄棟へ流します。

最後に

地域によって様々な特徴がありましたね。寒冷地は高気密・高断熱が良いとは言っても、WHOのデータを見れば寒冷地でなくとも健康のために高気密・高断熱の家はもはや標準仕様であるべきなのでしょう。高気密・高断熱であればあるほど換気・空気循環が必須になりますが、現在は新築時の24時間換気システム導入が義務付けられていますのでご安心を。


さて、本年も残すところあと2週間となりましたね。いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
来年も更に読み応え・実のあるブログを目指して書いてまいりますので、変わらずご拝読いただけます様どうぞよろしくお願い申し上げます!!m(_ _)m

それでは、本年も来年も、健康な住宅ライフを!

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