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ホテルライクな家の植栽計画。窓の向こうを設計する

注文住宅の植栽は、外構ではなく間取りと同時に考える

庭や植栽の話が出てくるのは、たいてい打ち合わせの終盤です。間取りが固まり、仕様が決まったころに「外構はどうされますか」と聞かれ、残った予算の中で駐車場を整えて玄関脇に木を一本、というかたちに落ち着く。とてもよくある流れです。
けれど、お引き渡ししてきた経験から申し上げると、暮らしはじめてからの満足度に効いてくるのは、窓の外に何が見えるかという一点です。上質な内装も、整った天井も、視線の先に隣家の外壁しかなければどこか落ち着きません。逆に、窓の向こうで枝葉が揺れているだけで、その部屋は驚くほど豊かになります。
つまり植栽は、外構という後工程の話ではなく、どこに窓を開けるかと同じ設計の話です。間取りを描いている段階で緑をどう考えるか、その順番と判断基準を、京都の注文住宅を手がける立場からお話しします。

植栽を「外構工事」から「設計」へ引き上げる

植栽を最後に考えると、必ず制約から入ることになります。駐車スペースを取り、給湯器と室外機を置き、配管や桝を通し、余った土の部分に木を植える。この順番では、木は残りものの場所に立ちます。根が張れる土量が足りず、窓から見える位置でもない。植えた直後はきれいでも、育っていかない植栽になりがちです。
設計から考えると順番が逆になります。ここに木を見せたいからこの壁に開口を取る。この木を育てたいから土の範囲をここまで確保し、室外機と給湯器は反対側にまとめ、地中の配管もそれを避けて計画する。こうして決めた一本は、毎日目に入る場所に、無理なく育つ条件で立ちます。
費用の面でも早いほうが有利です。設計段階なら外構と建物をひとつの計画として組み立てられるため、塀や土間の量を抑えてその分を緑に回すといった調整ができます。

最初に決めるのは樹種ではなく、「どの窓から何を見るか」

植栽計画は、樹木の名前から入らないほうがうまくいきます。最初に決めるのは、家の中のどこから緑を見たいか、です。
図面を広げ、一日の中で長く過ごす場所を挙げてみてください。ソファに座ったときの視線の先、ダイニングテーブルで顔が向く方向、キッチンに立って手を止めたときに目が行く窓。この三つか四つに緑が入れば、家の印象は大きく変わります。
次に、視線の高さを考えます。ソファに座った目線は床から一メートル前後、ダイニングチェアなら一メートル二十センチ前後、立っているときは一メートル五十センチ前後。座って見る庭と立って見る庭では、見えている範囲がまるで違います。座ると幹しか見えない、という失敗はこの確認を省いたときに起こります。
そして窓の切り取り方です。床から天井まで抜く開口なら根元まで見え、庭と部屋がひと続きに感じられます。腰から上を横長に切り取れば、地面の雑多なものが隠れ、葉のあたりだけが絵のように見えます。同じ木でも、開口の形が違えば別の景色になる。この調整ができるのはサッシを決める前だけです。

シンボルツリーは、本数ではなく一本の質で決まる

敷地に余裕がないから緑はあきらめる、というお話をよく伺いますが、必要なのは広い庭ではありません。しっかり見せられる木が一本あれば、住まいの表情は十分に変わります。散らして植えるより、一本に絞って足元を整えたほうが静かで上質に見えます。
選ぶときに見るのは、まず樹形です。幹が数本に分かれて立ち上がる株立ちは、細い枝が重なって軽やかに見えるため狭い場所や中庭に向きます。一本の幹が立つ単幹は存在感が出るので、外観の顔として効きます。
次に、大人になったときの大きさです。植えたときの姿ではなく、十年後の高さと枝の張りで判断してください。ここを見誤ると数年ごとに強く切り詰めることになり、木は不自然な形になっていきます。切らずに済む大きさを選ぶことが、結果的にいちばん美しく保つ方法です。
最後に葉の見え方。細かい葉が風に揺れる木は、白い塗り壁やモルタルの前に置くと影が美しく出ます。壁を背景、木を主題として一枚の絵にする。この視点を持つだけで、選び方は自然と絞られます。

落葉樹と常緑樹。季節で変わる光をどう扱うか

葉が落ちるかどうかは、見た目の好みではなく光の設計の話です。
落葉樹は夏に葉を茂らせて日ざしをやわらげ、冬には葉を落として光を通します。南や西の窓の前に置けば、季節に合わせて光の量が変わります。環境省がグリーンカーテンについて示している解説では、よく茂ったつる植物のカーテンで日射熱のおよそ八割を遮る効果があるとされています。樹木とつる植物では条件が異なりますが、葉が日ざしを受け止めるという考え方は同じです。植栽は景色であると同時に、夏の日射をやわらげる要素でもあります。
ただし、植栽だけで夏の暑さを制御しようとしないでください。葉が茂る時期と最も暑い時期は完全には一致せず、生育にもばらつきがあります。庇や軒、外付けの日除け、ガラスの仕様といった建築側の対策を主とし、植栽はそこに重ねる補助と考えるのが確実です。
常緑樹は一年中葉があるため、視線を遮りたい場所に向いています。隣家の窓と正対する位置や、道路から玄関までの間などです。実際の計画では、見せる場所に落葉樹、隠す場所に常緑樹と、役割で使い分けることが多くなります。

京都の狭小地でこそ、中庭と坪庭が効く

京都の市街地で建てる場合、道路側は閉じて内側に開くという設計をとることが多くあります。隣家が迫り、前面道路から視線が入る条件では、大きな窓を通りに向けて並べても、結局カーテンを閉めたままになるからです。
このとき緑を置くのは建物の内側です。二畳から三畳ほどの中庭や坪庭でも、そこに一本立ててリビングやダイニングから見えるようにすれば、家の中に自分だけの景色が生まれます。外から見えない緑は、視線を気にせず窓を開けられる点でも快適です。
中庭を計画するときは光の入り方を確認してください。四周を囲まれた場所は思っているより暗くなります。壁の一部を白い塗り壁にして光を回す、上部を大きく空ける、隣地側の壁を低くして朝日を入れる。こうした調整で、木が健やかに育つ明るさを確保します。あわせて排水も設計しておきます。土に水がたまると根が傷みます。
アプローチも緑を入れやすい場所です。門から玄関までの数メートルに、足元の低木と一本の木を添えるだけで、帰宅の数歩が静かな時間になります。敷地が広くなくとも、緑を入れる余白は探せば見つかります。

夜の見え方まで設計して、はじめて完成する

見落とされがちなのが夜です。日中の景色を思い描いて木を選んでも、家族がそろっているのは夕方から夜にかけての時間帯。ここを設計しておかないと、せっかくの窓が黒い鏡になってしまいます。
室内が明るく外が暗いと、ガラスは室内を映す鏡になります。窓辺に立っても見えるのは自分と部屋の姿ばかり。これは外に光があるだけで解消します。木の足元から幹を照らす一灯を仕込んでおけば、夜は葉裏が浮かび上がり、窓は景色を映す面に戻ります。
照らし方にはコツがあります。全体を明るくするのではなく、幹や枝の一部だけを下から照らすと陰影が出て奥行きが生まれます。光源が室内から見えないよう器具は低木の陰に隠し、色は電球色に近い温かみのある光を選ぶと、室内の間接照明とつながって見えます。
そして屋外用のコンセントと配線です。庭の照明の電源は、建物の電気配線を決める段階で確保しておく必要があります。後から引こうとすれば、土間を壊すか配線が露出するかになります。夜の景色は、図面の段階で決まっています。

手入れ・時期・予算。続けられる計画にする

美しい庭は、続けられる庭です。ここは正直にお伝えしておきたいところです。
落葉樹は当然ながら葉を落とします。自分の敷地に落ちるぶんは掃除で済みますが、隣地や道路に落ちる場合は気を遣うことになります。植える位置を境界から引く、落ち葉が飛びにくい配置にするといった配慮を計画段階で入れておくと、暮らしはじめてからの気疲れが減ります。枝の越境については法律も整理されており、二千二十三年四月に施行された改正民法では、竹木の所有者に切除を求めても相当の期間内に切除されないときなどに、越境された側が自分で枝を切り取れると定められました。もっとも、そこに至らないのがいちばんです。自分の木が育ったときにどこまで枝が伸びるかを、あらかじめ見ておくことが最善の対策になります。
手入れは、年に一度から二度、専門の職人に剪定を頼むのが現実的です。ご自身で整えるにしても、脚立に乗らずに手が届く高さかどうかは樹種選びの段階で確認してください。管理できる本数と高さに絞ることが、十年後もきれいな庭を保つ最大のコツです。なお自治体によっては生垣づくりや敷地の緑化への助成制度が設けられている場合があります。内容や条件は年度で変わりますので、計画地の自治体の窓口でご確認ください。
植える時期にも適期があり、一般に落葉樹は葉を落としている休眠期が向くとされます。工程と適期が合わないときは、植栽だけを後日に回す判断もあります。予算は、外構と植栽をひとまとめの金額で早めに押さえておいてください。建物の見積もりだけで資金計画を立てると、後から出る外構費で予算が窮屈になり、真っ先に削られるのが植栽です。

まとめ:窓の向こうを設計する

押さえておきたいことを整理します。植栽は外構の後工程ではなく、間取りと同時に考える設計の一部であること。樹種から入らず、どの窓から何を見るかを先に決めること。本数ではなく一本の質で決め、十年後の大きさで選ぶこと。見せる場所に落葉樹、隠す場所に常緑樹。夜の照明と屋外電源は図面の段階で決めておくこと。そして、続けられる規模に絞ること。
建物は引き渡しの日がいちばん新しく、そこから時を重ねていきます。庭は反対で、植えた日がいちばん頼りなく、五年、十年と経つほど枝が広がり、幹に風格が出て、家に馴染んでいきます。育つものを一緒に持てるのは、注文住宅ならではの楽しみだと思います。
窓の外に緑があるだけで、家の中の時間は静かに変わります。朝カーテンを開けたときの光、帰宅して玄関へ向かう数歩、食卓から見える照らされた枝。派手なことではありませんが、毎日積み重なる質の差です。LIQでは、間取りを描く最初の段階から、窓の向こうに何を見せるかを含めて設計しています。

敷地の条件を拝見しながら、窓の向こうの景色までご一緒に計画します。相談会・資料請求を承っています。

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